タイムラプス培養器で得られる胚の動態と臨床特徴を組み合わせることで妊娠率を上昇させる|北くまもと井上産婦人科医院 リプロダクション部門|熊本市北区にある不妊治療専門外来
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医療コラム

タイムラプス培養器で得られる胚の動態と臨床特徴を組み合わせることで妊娠率を上昇させる|北くまもと井上産婦人科医院 リプロダクション部門|熊本市北区にある不妊治療専門外来

タイムラプス培養器で得られる胚の動態と臨床特徴を組み合わせることで妊娠率を上昇させる

こんにちは

本日は当院にもあるタイムラプス培養器に関する報告をご紹介いたします。

体外受精において、妊娠率・出産率の高い胚の選択は、胚の見た目で妊娠しやすいか判断する形態学的評価が一般的です。形態学的評価は、胚を培養器から取り出し顕微鏡下で授精後1日おき胚を観察する静的評価と培養器に入れながら胚を10分おきに観察し画像をつなげて評価する動的評価があります。ただ、胚の形態学的評価は、観察者により評価が変わる可能性があります。当たり前ですが、最良好と判断された胚でも妊娠しないことや、不良と判断されても妊娠することがあります。
 一方、着床前遺伝子スクリーニング (PGT-A) は、胎盤になる細胞の染色体を次世代シークエンサーという診断ツールで染色体の増減にエラーがないか確認し、エラーがないと予想される胚を移植することで流産率をさげるという方法です。ただし、PGT-A は費用・時間がかかり、胚の着床する細胞を採取するという侵襲的な処置であり、35 歳未満の患者など、異数性率がそれほど高くないグループに利益をもたらすかははっきりとわかっておりません。

 そこでこの研究は、タイムラプスで得られる動的病態と年齢やAMH、移植時の子宮内膜の厚さ、タイムラプスのビデオスコアなどの臨床的特徴を合わせて分析することで、妊娠の可能性の高い胚を予測する性能が向上するか検討しています。 

タイムラプス培養器がつけたスコアは培養士の判断した胚の質と相関する

培養士が多数決で決めた良好胚と判断した胚とタイムラプス培養器がつけたビデオスコアは高く、培養士が不良胚と判断した胚のビデオスコアは低くく相関関係がみられました。

胚の発生具合と臨床的特徴を分析することで、妊娠予想の性能が向上する
タイムラプス培養器がつけたビデオのみでトレーニングされた画像認識モデル(3D-ResNet)は、3D-ResNet の出力と臨床的特徴の両方を分析したハイブリッドモデルとAUC(Area Under the Roc Curve)を用いて比較されました。 このAUCは1に近いほど精度が高いと判断されますが、ハイブリッドモデルのAUCは0.727±0.012、3D ResNet モデルのAUCは0.684±0.016とハイブリッドモデルの方が優れていると判断されました。臨床的特徴の中で影響をあたえる因子としては、胚の形態動態を反映するビデオスコアが一番大きく、次が年齢でした。その他の臨床的特徴として総ゴナドトロピン投与量、使用可能な胚数、採卵数や子宮内膜の厚さも妊娠予想の制度に影響をあたえました。

ハイブリッドスコアは妊娠率と相関する
ハイブリッドモデルのスコアが増加すれば妊娠率が増加するかどうか判断するため、スコアを4群に分類したところ、スコアが増加すれば妊娠率も有意に増加したことがわかりました。

新鮮胚移植や35 歳以上で効果が高い
新鮮胚移植と凍結胚移植では新鮮胚移植の方がAUCは高く、年齢では35歳未満でAUC 0.68±0.01は、35歳以上でAUC 0.74±0.02と年齢が高い方が妊娠を予想する精度が上がることがわかりました。

まとめ
タイムラプス培養器の形態学的評価のみより、臨床的特徴を組み合わせて分析することで、胎児心拍を確認できる胚を選択する精度が上がる可能性があるという報告でした。

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