一方の卵巣を摘出するともう片方の卵巣のFSHの反応性が変化するか
- 2023年7月15日
- 体外受精
片側卵巣切除術が FSH に対する卵胞の反応性が変化するか検討した報告をご紹介いたします。
Human Reproduction, Volume 38, Issue 6, June 2023, Pages 1168–1182,
手術により片方の卵巣が無くなると卵子の半分が急になくなることとなります。そのため、AMHは低下します。抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベルは、AMHレベルが高い群と比較し、AMHレベルが低い群と比較するとゆっくり低下するとKatらにより報告されている。閉経時期に関しては、変わらないか少し早くなる程度です。
採卵数は、片方の卵巣摘出した場合は減少しますが、性腺刺激ホルモンに対する卵巣の感受性が低下している可能性も示唆されています。そのためこの報告は、片側卵巣切除術が FSH に対する胞状卵胞の反応性が変化するか検討しています。
両方の卵巣で、直径 3 ~ 9 mm のすべての卵胞数 (AFC) と、直径 16 ~ 22 mm の卵胞数 (排卵前卵胞数、PFC) をトリガー日に測定しました。
卵巣の反応性をみるため下記の計算方法があります。
FORT : トリガー日の PFC/ 月経3 日目の AFC× 100
Alviggiらの卵胞対卵母細胞指数(FOI):採卵数/AFC×100
Liらの卵巣感受性指数 (OSI):採卵数 /FSH の総用量× 1000
こちらの計算方法で一方の卵巣を摘出した群と手術していない群の卵巣の反応性を比較しています。
344人(単一卵巣群:n = 86、両側卵巣群:n = 258)を対象とました。
AMHや刺激前の胞状卵胞数は片側卵巣群よりも両側卵巣群のほうが良い結果でした。また、トリガー日の卵胞数(PFC)や採卵数は両側卵巣群の方が多い結果でした。しかし、卵巣の反応性をみる指標のFORTでは有意差をみられませんでした。また、FSH に対する卵巣感受性を表すFOIやOSIは、両群間に差はありませんでした。
AMHとベースラインAFCを調整後の分析では、片側卵巣摘出術後のトリガー日のPFCが高く、FORT比が高いことが明らかになりました。これは、卵巣が1つ残っている女性の卵巣機能を最適化するための適応メカニズムである可能性があります。実際、片側卵巣の女性は、通常女性と比較して、全体的に産生する卵母細胞の数が少ないにもかかわらず、体外受精の結果は同等のままであり、生殖能力が損なわれていない可能性をKhanらは報告しています。
メカニズムは解明されていませんが、著者は片側卵巣摘出術後の残りの卵巣内の小さな胞状卵胞の顆粒膜細胞上の FSH 受容体の密度がより高くなっているのではないかと考えていました。
この研究は、外因性FSHに対する胞状卵胞の反応性が、両側卵巣のある女性の反応性と比較して、片側卵巣摘出術を受けた女性において増加している可能性を提示しました。