勤務内容と精液検査結果|北くまもと井上産婦人科医院 リプロダクション部門|熊本市北区にある不妊治療専門外来
〒861-5517熊本県熊本市北区鶴羽田1丁目14-27
電話のアイコン096-345-3916
ヘッダー画像

医療コラム

勤務内容と精液検査結果|北くまもと井上産婦人科医院 リプロダクション部門|熊本市北区にある不妊治療専門外来

勤務内容と精液検査結果

こんにちは

リプロダクション部門 責任者の井上です。

今回は、男性の職業と精巣機能を調査した報告が発表されていましたのでご紹介いたします。

Human Reproduction, Volume 38, Issue 4, April 2023, Pages 529–536,

 

 不妊症は、カップルの約15% と推定されており、男性が由来する不妊症が 約40% を占めています。 さらに、過去数十年間に精液の質も低下していると報告されています。 これまでの男性の生殖能力に関する疫学文献のほとんどは、環境化学物質、食事、BMI、身体活動に焦点を当てていますが、職業的要因に関する研究はほとんど行われていません。そのためこの分析では、米国マサチューセッツ州ボストンで不妊クリニックを受診している男性における、自己報告された職業的要因(重量物の運搬、勤務シフト、職場での身体活動のレベルなど)が、精液検査結果と関連しているか調査しています。 二次分析として、職業的要因と生殖ホルモンに関連しているかも評価しました。
 自己申告でのアンケートで、377人 950 回の精液検査がこの分析に含まれました。

 自己申告での職業的要因が精子濃度および総精子数と関連していました。 たとえば、職場で重量物の運搬をすると報告した男性は、重量物の運搬をしないと報告した男性と比較して、精子濃度が 46%、総精子数 が 44% 有意に高い結果でした。精子濃度と総精子数の結果は、シフトで働く男性と比較して日勤ので働く男性も同様の結果で、仕事で激しい身体活動の男性と比較して軽い身体活動をしている男性でも同様の結果が見られました。重量物を移動する頻度、勤務形態、および仕事中の身体活動のレベルは、射精精液量、総運動性、または正常形態率とは関連していませんでした。

 ホルモン測定をした145 人の男性で、勤務形態は、総テストステロンとエストラジオールの両方の血清濃度に関連していました。 具体的には、夜勤またはシフトで働く男性は、日勤で働く男性と比較して、有意にテストステロンが 24% 高くエストラジオール濃度が 45% 高い結果でした。 また、仕事で激しい/中程度の運動をしている男性は、軽い運動をしている男性よりもテストステロン濃度が高いこともわかりました。 さらに、職場で重量物を移動する男性は、しない男性と比較して、エストラジオール濃度が高かった。 職業的要因と血清 FSH や LH 濃度に関連性はみられませんでした。

<まとめ>
  日中勤務の男性や、重量物を運搬しない男性と比較して、昼間以外のシフトで働いている男性や肉体的に厳しい仕事をしている男性は、精子濃度と総精子数、エストラジオールと総テストステロン濃度が高いことが観察されました。 精液の量、精子の運動性、形態、FSH および LH の血清濃度との関連はみられませんでした。

肉体的に厳しい仕事をしている方のテストステロン濃度が上がることは、よくいわれていますが、この報告ではエストロゲンも上昇していました。その考察としては、過剰なテストステロンがアロマターゼ酵素によってエストロゲンに変換されるという仮説を立てていました。

矢印のアイコン