卵巣の老化を緩和するサプリメント|北くまもと井上産婦人科医院 リプロダクション部門|熊本市北区にある不妊治療専門外来
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医療コラム

卵巣の老化を緩和するサプリメント|北くまもと井上産婦人科医院 リプロダクション部門|熊本市北区にある不妊治療専門外来

卵巣の老化を緩和するサプリメント

卵の老化を軽減し、卵巣機能や治療成績の向上につながる可能性のある物質についてご紹介いたします。

Reproductive Biology and Endocrinology (2022) 20:156

①コエンザイムQ-10(CoQ10)

CoQ10レベルは年齢とともに低下するため、CoQ10の補給は加齢に伴う卵巣予備能の低下を緩和する可能性があります。

 CoQ10は、ミトコンドリアにおけるエネルギー産生の必須成分であり、抗酸化物質として機能する脂質過酸化および DNA 酸化を防止する働きをしています。CoQ10は、卵を取り囲む卵丘細胞や卵胞液に存在する脂溶性の天然抗酸化物質であります。女性では、CoQ10レベルは年齢とともに減少し、卵胞液CoQ10のレベルは卵の質と相関すると報告されています。Ozcan PらによりCoQ10の補給は、ラットの卵巣予備能を老化から保護し、老化の影響を軽減すると報告されています。
 Ben-Meir AらによるとCoQ10が老化の影響を改善するメカニズムの1つは、ミトコンドリアのDNA酸化を阻害し、卵母細胞のアポトーシスを阻害することと発表しています。これにより、老齢卵母細胞におけるミトコンドリア機能障害と DNA 断片化率の増加は、CoQ10 補給によって緩和されました。 

 老化は卵を取り囲む卵丘細胞の数を減らし、アポトーシスを増加させます。Zhang Mらは老齢マウスへのCoQ10の投与が、ミトコンドリア代謝を改善し、アポトーシスを減少させ、卵丘細胞数を回復させ、グルコース取り込みを刺激し、プロゲステロン合成を増加させることができたと報告しています。

 さらにメタアナリシスで、CoQ10の経口補給を含む5つの無作為対照試験で、CoQ10の経口補給は臨床妊娠率を高め、卵巣機能が低下した方に良好な結果をもたらすと結論付けられました。(ただ、用量と期間は様々)

様々な報告をまとめると
CoQ10は老化によるミトコンドリアの変化を緩和する
↑ ミトコンドリア遺伝子の発現と活性
↓ DNA 酸化を阻害し卵巣内の残っている卵が枯渇することを遅らせる
↓ 卵のアポトーシス
↓ 卵丘細胞のアポトーシス
↑ 卵の質
↑臨床妊娠率

 日本におけるCoQ10の1日摂取推奨量は30~300mg程度ですが、John Nらは、CoQ10の副作用を調査したところ、1200mgまで服用しても安全性が高いことを示しています。

②デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)
:デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は、老化した卵巣の生殖能力を改善する可能性があります

 DHEAは副腎皮質や卵巣でコレステロールからのテストステロン、エストラジオールの合成中に産生され、年齢とともに低下することが観察されています。アンドロゲンは、原始卵胞を活性化することにより、一次卵胞の数を増加させることが報告されており、また顆粒膜細胞でFSH-受容体活性を促進し、ゴナドトロピン刺激に対する胞状卵胞の反応を増加させることが実証されています。アンドロゲンと同様に、DHEA は卵胞形成に重要であることが分かっており、DHEA の投与は、特に 卵巣反応の悪い群において、IVF の臨床成績を改善する可能性があります。

 DHEA の効果のメカニズムの 1 つは、IGF1 (インスリン様成長因子1受容体)というたんぱく質の増加により、ゴナドトロピンに対する反応を高め、卵の質にプラスの効果をもたらす可能性が報告されています。
 別のメカニズムは、DHEAがミトコンドリアの鬱血と酸化的リン酸化の輸送を改善、また、DHEAは老化した卵胞で行われる嫌気性代謝から好気性代謝にエネルギー産生をシフトし、卵丘細胞のミトコンドリアの酸素消費量を増加させミトコンドリアの機能を改善させる可能性があります。

様々な報告をまとめると
DHEAはミトコンドリアの機能不全を緩和する
↑エネルギー生産

↑ IGF1
↑ 卵巣刺激に対する反応性
↑ エストロゲン産生
↓ アポトーシス
↑ 卵子の質
↓ 閉鎖卵胞数

③ビタミン D(血清 25-水酸化ビタミン D[25(OH)D]):ビタミン D 値(25(OH)ビタミンD)は、妊娠転帰に正の相関がある

 ビタミン Dは、日光にさらされると主に皮膚で合成されますが、食事から摂取することもできます。ビタミン Dの補充が卵胞の生存、成長、機能、成熟、AMH 産生を改善することが報告されています。ビタミン D値は、血清 AMH レベルに反映されるように、卵巣予備能と関連し、AMH の間に相関関係があるとも報告されています。 

 Ozkan SらによるとIVF を受けている不妊女性を対象とした研究では、卵胞液の25-ヒドロキシビタミンDが高いほど、臨床妊娠率および着床率が有意に高いことが報告されています。しかし、妊娠率が低下するという報告もあり、卵胞液に関しては結果が様々です。
3件の前向き研究では、血清ビタミンDは、採卵数や受精率と正の相関があったと報告しています。Anifandis GMらは、ビタミンD値が20 ng/mL以上で、血清レベルが20 ng/mL未満の女性と比較して臨床的妊娠率が有意に増加し、サブグループ分析では、血清レベルが> 30ng/mLで妊娠の可能性が最も高いと結論付けています。

様々な報告をまとめると
↑ 卵胞の発育と生存
↑臨床妊娠率
↑ 卵成熟
↑AMH生産

 このようなサプリメントを服用することで妊娠率の改善をもたらす可能性があります。ただ、サプリメントとはいえ副作用もありますので、服用する際は必ず主治医とご相談ください。

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