子宮卵管造影検査の報告
- 2023年5月1日
- 不妊検査
こんにちは
本日は、子宮卵管造影検査後の妊娠に関しての報告や副作用についての報告をご紹介いたします。
子宮卵管造影検査を行った後は妊娠率が上昇するという報告は多くあります。
様々な報告をまとめた2017年のThe New England Journal of Medicineや2018年のfertility and sterilityでも、子宮卵管造影後の妊娠率は水性の造影剤より油性の造影剤の方が良いという結果が報告されています。
2020年のfertility and sterilityで発表されたRijswijkによると、5 年間の観察期間において、HSGに使用した油性造影剤による卵管洗浄は、水性造影剤と比較して、累積妊娠率と生児出生率が高くなっています。また、 油性造影剤を使用した HSG 後は、妊娠までの時間が短くなると報告しています。
2022年にはRosielleらによると、高齢女性、排卵障害のある女性、および卵管病変のリスクが高い女性に対して、油性造影剤を使用したHSGによる卵管フラッシングの受胎能増強効果は費用対効果が高いと報告しています。
次に造影剤の安全性についての報告です。
2021年 Reprod Biomed Online.でのRoestらによると、一番多い合併症は造影剤の血管内流入であったと報告しています。
・血管内流入
子宮内に造影剤を注入しますが、それが血管に流入することがあります。この造影剤の血管内流入は、油性造影剤を使用した HSG 後に 2.8% (38/1353)、水性造影剤を使用した HSG 後に 1.8% (18/1006) 発生していました。血管内流入で重篤な合併症となる可能性がある油塞栓症というものがあります。ただ頻度はHSG の 0.1%; 18/664、血管内流入の症例の 2.7%であり、症状も軽く、X 線透視下で行えば、油塞栓症の深刻な合併症は発生しなかったとしています。血管内流入に関しては、造影剤注入量にも関係していると思われます。
・感染
次に、造影剤使用による感染のリスクがあります。しかし、抗生物質の使用増加と改善により、これらの感染症の経過はそれほど深刻ではなくなったようです(抗生物質の予防投与で 0.5%程度)。
・甲状腺機能
Satohらの日本の後ろ向きコホート研究では、リピオドールを使用した HSG 後の新生児の甲状腺機能を評価しています。先天性甲状腺スクリーニング 異常は 2.4% (5/212) で見られました( 無症候性甲状腺機能低下症の 3 例と顕性甲状腺機能低下症の 2 例)。
Welieらの別の後ろ向きコホート研究では、妊娠前に油性造影剤 (n = 76) と水性造影剤 (n = 64) を使用した HSG を行い、その後生まれた 140 人の新生児の甲状腺機能を調査しました。 先天性甲状腺機能低下症のスクリーニング中に陽性と判定された新生児はいませんでした。 さらに、使用された造影剤の量は甲状腺機能に影響を与えませんでした。
ただ、造影剤を使用すると、一時的に甲状腺機能が変動しますので甲状腺機能のコントロールがうまくいっていない方は注意が必要です。
妊娠率だけ見ると油性の造影剤を使用した方がよいかもしれませんが、合併症を起こしやすい症例などは水性の造影剤を使用しても良いかもしれません。
当たり前ですがひとりひとりにあった検査法を計画立てていく必要があります。